薪ストーブのカタログの読み方

はじめて薪ストーブのパンフレットを見た時、聞き慣れない言葉が多くあると思います。ここではスペックに関しての主な言葉を解説します。

熱出力

熱出力とは薪ストーブが発する熱量のこと。一般的に最大、定格、最小で表されますが、近年は「定格(熱)出力」で表すメーカーが増えています。また、熱出力の単位には「kcal/h」「kW」「Btu」の3つがあり、近年では国際単位であるkW表示を多くなっています。

エネルギー換算

熱出力の計測には「現実に即した状態の薪」が使用されます。使用される薪は、アメリカでは入手が容易なダグラスファー(米松)。薪ストーブ各々に合ったサイズ(長さ、太さ)かつ適当な含水率(約20%)にした標準的な薪(米国環境保護庁:EPAでの排気煙量測定に使われる)が使われて計測します。

より細くより小さい(断面積が大きい)、より乾燥した薪を使用すれば、そのデータは飛躍的に向上しますが、空気の取り込み量が最大になるようにセットし、適当な間隔で薪を追加していきます(平均的なサイズの薪ストーブでおよそ3時間間隔)。時間当たりの燃料消費量と含水率、そしてその薪ストーブの効率がわかれば熱出力がわかります。

この算出方法は、アメリカでは同国政府が定める要件ではなく、各薪ストーブメーカーが独自の規定で行われているため、公表されている数値は必ずしも各メーカー間の薪ストーブを比較するためには役立ちません。日本では薪ストーブが普及していないため、熱出力は海外メーカーのカタログ値を使用しています。

 

燃焼時間

熱出力(薪がどのくらいの熱エネルギーを発揮できるか)に対し、“薪がどのくらい長くもつか”が燃焼時間です。現在発売されているアメリカ環境保護庁(EPA)認証薪ストーブは、その大きさにかかわらず全て、そのテストを受けるとき、1kg/h(1時間当たり1kg)以下の消費率であることが求められます。

アメリカ製薪ストーブは、0.9〜0.99㎏/時の消費率で運転されるので、最低燃焼比率はどの薪ストーブもあまり差がなく、最大燃焼時間の差は、燃焼室に入る薪の量に比例されることがほとんどです。しかし、触媒式やリーンバーン式の薪ストーブは、燃焼室(一次燃焼室)の温度が低くても効果的な燃焼が得られるため、燃焼比を低くして運転できるので、燃焼時間を長くすることができます。

一方、クリーンバーン式の薪ストーブの場合は、効果的に運転するためには燃焼室内の温度を高くしなければならず、このため、一般的には燃焼時間は短くなりがちです。

このテストでは、ほどよい状態の熾の上に新たな薪を補充し、その薪が再びほどよい熾の状態(次の薪を入れれば再点火する状態)になるまでの時間が計測されます。その結果は、薪の性質や樹種、含水率、その大きさなどによって一回ごとに異なるため、最大燃焼時間を決定する際は、数回テストを行い、その平均値を採用します。

 

暖房面積

暖房面積は科学的に求められた数値ではなく、各薪ストーブメーカーが長年の経験の中で導き出した数値であり、各々異なった算出方法を採用しています。例えば、厳しい気候である米国北東部ニューイングランド地方においての暖房可能な面積であったり、逆に比較的温暖な地域のメーカーではその数値が大きく異なったりします。薪ストーブの性能は、薪の品質、薪ストーブの操作方法、煙突の条件などによって大きく異なるので、これら数値はあくまでも参考値として捉える必要があります。

 

離隔距離

薪ストーブと建物の壁や床、天井などとの安全が図れる距離を離隔距離と言います。アメリカでは、薪ストーブをこれ以上熱くできない状態まで燃やし続けて、よく乾燥したダグラスファーの「ブランド」(細い木を格子状に組んだもの)を薪ストーブと周辺の温度が平衡になるまで、7分半間隔で何時間も投入し続けます。テスト中の温度は、15cm間隔に配列した100か所の温度測定センサーで監視します。

このテストでは、可燃性の壁の限界温度を「周囲の温度+65℃以下」、保護されている壁の限界温度を「周囲の温度+50℃以下」としています。各温度測定センサーの平衡温度が許容限度以下になるまで、後ろの壁や横の壁を移動させます。床の保護が必要かについても同様にテストします。床の温度が許容限度を超えると、安全温度になるまでヒートシールドや断熱材を薪ストーブに加えていきます。

テスト結果は、法令に従い第三者認定機関に提出し、その内容に間違いがないかを確認します。しかし、長期にわたるその確実な実績が評価され、テストに第三者認定機関が立ち会うことなどはなく、定期的に設備の状態や製造工程を確認する程度となっています。

日本では建築基準法や消防法で厳密に規定されています。

 

燃焼効率

薪ストーブの性能を示す効率には「燃焼効率」「伝熱効率」「総エネルギー効率」の3種類があります。「燃焼効率」は燃料がもつエネルギーがどれだけ熱に変換されたかであり、「伝熱効率」は発生した熱がどれだけ室内に伝わったかという割合を示すものです。これに対し、「総エネルギー効率」は、燃料がもつエネルギーに対し、室内に伝わった熱量がどれほどかの割合を示すものであり、各薪ストーブメーカーが採用し、カタログに表記している燃焼効率がこの「総エネルギー効率」です。

薪ストーブライフNo.32